2018年12月には12本の映画を観ました。1番のオススメは「カランコエの花」に決定。上映館が非常に少なく、観る機会があまりないのですが、それゆえにこそ強くオススメします。

2018年12月に、主に劇場で観た映画に関する感想などを書き留めておきます。新しい作品を観るごとに、また何か思いついたたびに随時追加更新していきます。ネタバレはしないように努めていますが、場合によってはその限りでないのでご注意ください。

2018年12月29日 シュガーラッシュ:オンライン

女は夢を追い求めるが、男が足枷となる。しかし愛ゆえに女はそれでも男を捨てられない。「アリー/スター誕生」ではなく、 「シュガーラッシュ:オンライン」の話ですよ。
なんか似たような内容の映画を続けて観てしまった。と言っても、もちろんこちらはそンな深刻な話ではなく、そこはあくまでもファミリー向けの楽しい作品である。

2018年12月28日 アリー/スター誕生

ブラッドリー・クーパー、初の監督作品は、なにか決定的なことが起こる瞬間をあえて見せなかったり、見せる/見せないにこだわった演出をしてみせた。

前半と後半で同じようなシチュエーション、同じような構図の映像を反復してみせる場面が数カ所あるが、それぞれにその意味合いが変わっているところも巧みだ。

そんなさりげなさや、本筋と関係なさそうなディテールの豊かさなど、イーストウッドから受け継いだものは多い

本編終了後にタイトルが出るのは今や珍しい手法ではないが、本作の場合、そこにある種の残酷さがあるように思う。

2018年12月22日 テルマ

見逃していた作品を、年末になってようやく観ることができました。良作ではあるけど、期待値が高すぎたせいで、個人的にはやや物足りなく思ってしまった。

派手さを抑えた端正な映像・演出を積み重ねつつ、ツイストを効かせたプロットでホラー、SFといったジャンル映画を再構築する。近年、こうした作品が増えているように思う。

エンディングは人によって受け止め方が違うらしいけど、僕の頭に浮かんだ言葉は、”大いなる力には大いなる責任が伴う”だね。ただし、アンニャとはそもそも、ってとこを考えると、とても閉塞感のあるエンディングではある(ネタバレにつき、詳細は伏す)。

2018年12月22日 シシリアン・ゴースト・ストーリー

互いの気持ちを確かめ合ったばかりの若い恋人たちは、マフィアによる誘拐、監禁により引き裂かれてしまう。
主観と客観、幻想とリアル、さまざまな映画文法をコラージュして紡ぎ出される物語を読み解くのは簡単ではない。

例によって事前情報入れずに観たので、エンドロールが始まって、これが実際にあった凄惨な事件をベースにした作品と知って驚いた。
実話をもとにしているのにもかかわらず、それも大人に理解されない若い恋の暗喩であるかのように感じた。

2018年12月16日 カランコエの花

この日、アップリンク吉祥寺にて2本目の作品は「カランコエの花」。またとんでもない映画を観てしまった…

差別意識はウロボロスの蛇のような円環構造をとる。恐ろしいことにこの蛇は自己を食いながら増殖していくのだ。やがて差別意識とは無縁の者までもが、この円環構造に絡め取られ、底知れぬ沼に引きずり込まれてしまう…

この映画はこの底なし沼のキリキリとした(やや語弊があるかもしれないが)〈心理戦〉を、思春期ゆえの戸惑う心と重ねることによって、観る者の心を打つーいや、心を削る、痛ましくも恐ろしい作品であった。

出口は示されない…彼女ら、彼らはどのようにこれを乗り越えていくのか…
まったく、年の瀬になってやっかいな映画を観てしまった…

それはそうと、この作品。自主制作で低予算映画だろうから、メジャーな役者は出ていないのだが、全ての登場人物の演技が自然、かつリアルで魅力的。驚嘆すべき。
あらためて言う。今年のベスト作品のひとつ。

上に、出口は示されないと書いた。だが、監督は希望はあると言っている。
そう、映画の中に出口は示されていないが、観客一人一人がそれを探す。そこに希望がある。

さて、やや余談であるが、この作品は通常、Blu-rayでの上映だそうだ。アップリンク吉祥寺では、初のDCPでの上映だったそうだ。これまでと格段に良い画質、音響になったそうで、初見で高画質版を鑑賞できたのは幸運であった。

どうしても上映映画館が限られるこの作品、なるべく多くの人に観てもらおうと、クラウドファンディングでDVD化を支援するプロジェクトが立ち上がっております。すでに目標額は達成されていますが、ささやかながら、私も協力することにしました。

2018年12月16日 メアリーの総て

休みを取って新設の劇場、アップリンク吉祥寺にて映画鑑賞をハシゴ。1本目は、「メアリーの総て」。かの〈フランケンシュタインの怪物〉の誕生には、その時代を生きる女性の絶望と孤独が隠されていた…という作品。

監督のハイファ・アル=マンスールは、サウジアラビア出身かつ、サウジアラビア初の女性監督だそうだ。監督にとって、映画に描かれていた女性への抑圧は、200年前のできごとと笑い飛ばせないリアリティをもつものであろうことは想像に難くない。

記憶にあるかぎり晴天のシーンがないこの作品で、美しい映像を撮影したのは、ダビド・ウンガロという方。ちょうど公開中の「暁に祈れ」の撮影もこの方。こちらの作品もみてみたいな。あまり情報がないけど、フランス系の方だろうか?

ここからは余談。小説「フランケンシュタイン」を読んだのは大昔だが、映画化作品等から連想されるようなシンプルなホラーでは全くなくて、回想譚の途中で手記やら書簡からの長い長い引用はさみこまれる重層的な構造になっており、ひとことでいうと読みにくくて閉口した記憶しかない

2018年12月09日 パッドマン 5億人の女性を救った男

偏見と闘いつつ、苦難の果てに、格安の生理用品製造機を発明するが、まだ、人々の理解は得られない。その先に驚くべきサクセスストーリーが……

予備知識入れずに観に行ったせいもあって、サクセスの方向性自体が想像を超えていて驚き。世界に対する視野を広げてくれる作品でした。

2018年12月08日 恐怖の報酬 オリジナル完全版

本日2本目はフリードキン版「恐怖の報酬 オリジナル完全版」。1977年公開当時は、興業的に失敗だったそうだが、荒々しく禍々しい迫力には圧倒されるほかない。

2018年12月08日 カメラを止めるな!

ブルーレイも購入したけど、やっぱり本編を鑑賞するなら劇場で。というわけで、7度目の劇場鑑賞。
同じ作品を劇場で7回、しかも短期間で観るのは人生初です。

2018年12月07日 来る

で、あのバケモノはいったいなんなの?というのがよくわからないままに終わり、消化不良感だけが残る。さりとて「イット・カムズ・アット・ナイト」のように、読み解きを楽しむ映画というわけでもないだろうし。

視点が変わる3部構成なのは賛否あるみたいだけど、僕は面白いなと思った。特に面白いのが第2部。あの闇がバケモノの正体に繋がってれば、もっと奥行きが出たんではないかと思うけど……

ところで、これは作品評価とは別軸の話で、常々思っていること。なぜ霊能者というのはいつも上から目線でわかったようなことを言うのか?一般人の知らないことを知っているからと言って偉そうな態度をして良いと言うのであれば、今時は医者でもそのような態度は批判される。職業倫理として猛省して欲しい。

2018年12月02日 斬、

農民の若者すら流暢に現代口語を話す。時代劇というより時代も場所も不明な抽象的な不条理劇なのか?同時にミクロな視点を突き詰めた故でもあるようだ。

状況は「七人の侍」を彷彿とさせる。そしてこれが「椿三十郎」の前日譚などと想像してみても楽しかろう。
しかし、、、

監督のインタビューによれば、あえて時代劇的なカタルシスを封印したらしい。

監督のインタビューというのは、こちら。

荻上チキ・Session-22 【袋とじ】映画監督・塚本晋也さんが今週も登場!最新作『斬、』について伺いました! #ラジオクラウド

そして、蛇足かつ当然すぎていうのもはばかられることだが、蒼井優は全く素晴らしいのである。

2018年12月01日 ヘレディタリー/継承

ちょっとしたところにも常に”いや〜な感じ”を被せてくる。トニ・コレットの怪演は見応えあり。怖いかというとそれほどでもなかった。

なんでそんなに怖くなかったかというと、登場人物にさして感情移入しなかったから。それは、この映画がそもそもそういう作りになっているからであって、この映画を批判しているわけではない。

この作品をキューブリックの「シャイニング」と並べて評する向きもあるが、まさにそういうことで、僕は「シャイニング」も怖いと思ったことがない。やっぱり登場人物に感情移入しなかったから。そして、キューブリックは安易な感情移入を拒む作品作りをしているのは周知の通り。

「シャイニング」を観ていて、主人公に感情移入する人がいるのだろうか?映画を観る限り、主人公ジャックは自分ではそうと気付かず勝手に狂っていくのであって、怪現象や狂っていく自分に対する恐怖はない。強いていうと、その妻や子が、狂っていく夫や父に対して恐怖を感じるわけだけど、その視点はどちらかというと背景的だ。

要するに、映画としての視点はどこか引いたところにあり、それはこの作品の持ち味であり、キューブリックの意図であろう。

この「へレディタリー」でも同じ構造が取られており、ゆえに、誰かの視点から観たときの恐怖に観客が共感する部分は無い、とは言わないまでも、薄いと言えるだろう。

というわけで、僕はこの作品のクールなテイストは薄気味の悪い何かを被せてくる演出を楽しんだが、怖かったかというと別に怖くはなかった。